研究内容/井上広滋
井上広滋のプロフィール1. 生物の生きざまを支える遺伝子機能とその進化
深海の熱水噴出域、河口域、潮間帯、サンゴ礁などユニークな環境に生息する無脊椎動物が、どのようにしてその環境条件に適応し、利用しているのかを解明しようとしています。また、それらの環境に生息する無脊椎動物のなかには、体内に微生物を共生させ、互いの持つ機能を利用しあいながら生きている生物も少なくありません。それらの生物の共生のしくみにも注目して研究を進めています。
具体的には、熱水噴出域の生物の硫化水素への適応機構、河口や潮間帯の生物の浸透圧適応機構や汚染物質に対する応答、サンゴ・褐虫藻・微生物の共生のしくみなどにとくに興味を持って研究を進めています。
2. 付着性生物の環境適応と付着機構
付着性の生物は、自分にとって好ましい環境を選んで付着します。例えば、熱水噴出域の生物には、熱水に近い場所が好きな種や、少し離れた場所が好きな種がいます。また、潮間帯の生物は、種ごとに付着している水深が違います。
私たちは、それぞれの生物が、どのような環境要因に基づいて付着場所を決めているのかを探るとともに、それぞれの種が基盤に付着するメカニズムの解明にも取り組んでいます。さらに、イガイ類は一旦付着した後も移動することができます。この移動のメカニズムの解明にも取り組んでいます。
3. メダカ類・イガイ類を用いる環境評価
生物はそれぞれの生息場所の環境に様々な機能を進化させて適応してきましたが、現在では人為的な環境汚染物質に対しても適応を迫られています。このような汚染物質に対応するしくみの解明に、メダカ属魚類や、イガイ類などを用いて取り組んでいます。
また、水圏生物の汚染物質への対応のしくみを利用した環境汚染モニタリングにも取り組んでいます。例えば、ジャワメダカなど海水適応力に優れるメダカ近縁種や、活発な濾過食を行うイガイ類を用いて、海洋における化学物質やマイクロプラスチックによる汚染の影響を調べる研究や、遺伝子ノックアウト系統やトランスジェニック系統を用いた環境モニタリング方法の研究が進行中です。